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2004/05/26掲載
無敗記録
 
イングランド史上2チーム目、それも1世紀以上前のフットボール・リーグ創設初年度に記録された無敗でのリーグ優勝という偉業を成し遂げたアーセナル。FA杯3連覇の夢を断たれ、チャンピオンズ・リーグでも同郷のライバルに敗れてしまったが、アルセーヌ・ベンゲル監督は新たな歴史を刻むことに成功した。

 収容人員3万8,000と、ビッグクラブにしては些か器の小さかったハイベリーから新しいスタジアムへと移ることが決まり、その建設費用捻出のために大きな補強は出来なかったが、熟成されたチームは極上の旨味を出した。

 開幕前の補強はドイツ代表のGKレーマンくらいであったし、シーズン途中に加えた主な戦力もレジェスのみ。
 それでも、チームにマンネリ化の様相やモチベーションの停滞は起こらず、タイトルへの渇望が欠ける気配を微塵も感じさせなかった。

 プレストン・ノースエンドが無敵を誇った頃、リーグのチーム数は12。
1チームはこなす試合数は全部で22試合、FA杯を合わせても最大で5試合が追加されるに過ぎない。現行は20チーム、これに国内のカップ戦は2つ加わり、しかも前年に好成績を収めていればチャンピオンズ・リーグでの試合もある。今季、アーセナルはFA杯で準決勝まで残り、欧州の舞台でも準々決勝まで進んでいた。リーグ戦だけでも38試合。そんな中、他の大会をも並行して戦いながら達成した無敗記録は、大いに賞賛されて然るべきであろう。

 過去に溯り、イングランド・フットボールリーグの歴史をひも解くと、プレストンの記録に一番近づいた経験を持つのは、やはりアーセナル。
 1990-91年シーズンをアウェーのチェルシー戦で喫した1敗のみで終えたアーセナルは、2ポイント減点という処置を受けたにも関わらず、独走でリーグを制した。

 但し、この敗戦はシーズン半ばの2月頭だったため、無敗記録のストップはそれ程大きな話題とはならず、結果的に最少敗戦数でシーズンを終えたことから悔しがる声が多く聞かれたという。

 また、1敗でシーズンを終えたのは、このシーズンだけではなく、1939-40年にもあったのだが、第二次大戦により全国リーグが中断されていたため、南部リーグという地域限定の扱いとなっている。

 ただ、2部リーグでの話となれば、1893-94年シーズンのリバプールも無敗での優勝を飾っており、3部が南部と北部に別れていた時代などにも無敗を記録したチームはある。

 単純な無敗記録という話になれば、1977年11月から翌年の12月まで42試合も快進撃を続けたノッティンガムを忘れるわけにはいかない。
 序盤で3敗していたノッティンガムは、ブライアン・クラフ監督の下で急激にチーム力を高め、1978年に初のリーグ・タイトルを手にしたのだが、当時の盟主リバプールが、翌シーズンのホームゲームで意地を見せ、連勝記録に終止符を打った。

 また、世界を見渡すと、コートジボアールのASECミモサ・アビジャンが1988年から1994年までの5年に渡り108戦無敗という記録を作っている。恐らく、これが世界記録であろう。

 これに次ぐのがルーマニアの雄ステアウア・ブカレスト。1986年から1989年にかけて104試合無敗。チャンピオンズ・カップでバルセロナを破って優勝した翌シーズンから、3季連続で無敗優勝を遂げている。
 ハジ、ラカトシュ、ベロデディッチなど、ルーマニア代表そのままとも言える布陣で欧州を席巻したことは、記憶している人も多いはず。

 ホームゲームに限ると、レアル・マドリッドが1957年2月から1965年3月まで実に8年以上も122試合無敗で通したのは、脅威と言う他ない。
今季、銀河的スター軍団と評されながらも、史上最悪の5連敗でシーズンを終えた選手たちは、偉大なる先人達の記録も信じられない程であろう。

 新しいところでは、ACミランも1991-92年シーズンを無敗で制しており、無敗記録を58まで伸ばしていた。この時、記録を止めたパルマとの試合は、世界中に衝撃的な映像として配信された。

 代表チームに目を移すと、1993年12月から1996年1月まで37戦して30勝と圧倒的な勝率を誇ったのが、ブラジル。当然、記録の中にはW杯米国大会での7試合も含まれており、ロマーリオやベベット、ドゥンガを軸としたチームが見事な安定感を示した時期であった。

 とはいえ、ブラジルの無敗記録が実質2年強だったのに対して、丸4年近く無敵と言われたのが、1950年代前半のハンガリー。
 プスカシュ、ヒデグチ、コチシュなど希代のクラッキを揃えたチームは、マジック・マジャールと怖れられ、ウェンブリースタジアムで負けたことのなかったイングランド血祭りに上げた他、五輪での金メダルも獲得。
 記録を止められたのが、W杯スイス大会の決勝戦。相手が戦後の復興間もない西ドイツであったことは、つとに有名である。

 国際試合も少なかった時代において、31戦で27勝。勝率は実に87%と前述のブラジル(81%)を上回る数字を残しており、如何に当時のハンガリーが強かったのかを端的に示している。

 圧倒的な強さを誇るチームが現れると、それを打ち負かそうと、他チームもレベルアップを図り、それが全体のレベルを引き上げる。クラブレベルにおいても、ナショナルチームにおいても、その流れは普遍。

 アーセナルには来季、ノッティンガムの無敗記録を更新するチャンスが与えられている。だが、マンチェスター・Uやチェルシー、リバプールなどライバルたちが記録を止めようと手薬煉を引いていることも間違い無い。彼らにしてみれば、早い段階でアーセナルと当たることさえ望んでいるのではないだろうか。

来季のプレミアリーグ。今季以上にハイレベルな争いが約束されている。

著者:らいてぃー 

 
 
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