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2004/06/23掲載
パスコースの作り方
 
大きな盛り上がりを見せるEURO 2004。時差も少なく、比較的慣れた気候での大会。自国から沢山のサポーターが駆けつけ、選手のモチベーションを高める。出場国のレベルは、W杯よりも高いと言われるだけあって、多くの好試合が展開され、日韓W杯では、コンディション調整に苦労した選手たちも、長いシーズンの疲れを見せずにハイ・パフォーマンスを披露している。

 欧州が世界のサッカーをリードする存在であることを改めて示す大会。
欧州選手権は、シーンの中心地で、そこを彩る選手たちによって成立し、華やかさを増す。

 試合を観て、一番強く感じられるのが、そのスピード感。
一本一本のパスやシュートが早いことはもちろんだが、攻守の切替えやポジションの修正においても、そのスピードは際立っている。

 そして、何より感心させられるのが、パスコースを作るうまさ。
狭いスペースの中、微妙なボールと人の動きが局面を打開し、次から次へアイディアを具現化させて行く。

 パスは、出し手と受け手の呼吸が重なり、初めて美しく完成する。
受け手の意思を無視した一方通行のパスでは、押し付けがましい気がするし、出し手のアイディアを受け手が感じずにいるのでは、もどかしい思いがする。

 要求を突き付けるのがどちらが先か。それは個々の場面によって異なるものだが、それは瞬時に判断され、ただ一つのタイミングでのみ成立する。

 急所となるべくスペースを探すリベロ。ニ手、三手先の場面を描いて散らしにかかるボランチ。スルーパスのコースを伺う司令塔に、虎視耽々とDFの裏を狙うストライカー。ポジション毎に意図するプレーは異なるが、それは全てゴールへの道筋を意識したもの。
 一つのパスが失敗に終われば、また最初からやり直す場合も多い。

 一瞬の判断が生死を分けるパス。ボール保持者が前を向いても、受け手が厳しくマークされていれば、そこからボールは出なくなり、パスコースは消滅する。

 パスがつながるためには、受け手がマークを外したり、スペースへ走り込んだりする作業が必要となり、例えマーカーを背負ってもがっちりとブロック出来る強靭さとボールコントロールが要求される。

 逆に、出す側の動きを注視すれば、敵のプレッシャーに負けず落ち着いてコントロール出来る場所にボールを置くことだけではなく、視野を確保して周囲の動きを確認することが前段階として存在する。

 中田英寿の長所として頻繁に取り上げられたのは、ボールをもらう前の首を振る動き。広く的確に周囲の状況を把握し、狭いスペースと短い時間の中で最良の選択が出来るように準備をしている訳である。

 こうした供給側としての準備に長けているのが、やはりフランスのジダン。他を圧倒するスキルに抜群の強さを持つフィジカル面の要素が融合し、様々な選択肢を可能としている。
 ジダンにパスが渡る前にアンリやトレゼゲがフィニッシュを見据えた動きを開始出来るのも、自らのコンダクターに全幅の信頼を寄せているからに他ならない。

 そして、ジダンの凄いところは、自分たちのイメージが崩されるようなディフェンスを受けた際にも、簡単にそれを覆すことが出来るところ。
 特に、門を見つける目の良さと、それを作り出すスピードには、もはや感嘆するしかない。

 門というのは、敵と敵の間に出来るパスコース。守備側の人間が適度な間隔を保つことが出来れば、門は閉ざされたまま。
 それでも、ボールの位置によって門は開いたり閉まったりする。

 例えば、下図のように3バックX、Y、Zが並ぶ場合、正面から見るとボール保持者Aには、XとY、YとZ、いずれの間にも門が見つからないだが、AがA'の位置に移動することによって、XとYの間には門が生まれる。

(図例)

A○
○A'
X△
Z△
Y△

 Aの地点から見た、XとY及びYとZの間隔より、A'の地点から見たXとYの間隔は広い。このように、ディフェンダーYがXとZの位置より引いたポジションを取ることを「深みをつける」と言うが、高い位置でのラインディフェンスが主流となって来た現代サッカーでは、この深みを見つける眼力が重要性を増している。

 もちろん、深みを探すのは最終ラインに限らず、中盤であっても同じこと。素早く敵の門を察知して密集するスペースを回避することは、ゲームのテンポを早める必須要件となる。

 ジダンやネドベドといったスーパースターは、この門を開ける天才とも言えよう。ボールをもらった時点では開いていない門も、自分が少しずれるだけで鍵を開けてしまう。また、相手に突っかけることで次の門を引き出し、受け手が楽になるパスを出す。

 当然、守備側もコースを消そうと常にポジションを変えて対応するのだが、真の天才には90分持たせることも難しくなる。

 Jリーグでは、パスミスが目立つ試合も多く。ルーズボールばかりが転がる時間も珍しいことではない。
 パスの出し所がないと判断すると、すぐ足を止めたり、後ろを向いたりする。これではスピード感あるゲームが期待できるはずもない。

 パスを受ける側の準備不足にも、責任は半分ある。
とはいえ、出す側の工夫と積極的な意識が足りないことも事実ではないか。

 欧州王座を争う試合と比べるのは、些か酷かもしれないが、Jリーガーも見習うべき点が、パス一つをとってもまだまだあることは確か。
世界トップレベルの試合に刺激を受け、日本の選手たちが向上して行くことを願わずにはいられない。


著者:らいてぃー 

 
 
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