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2004/07/07掲載
ギリシアの明暗
 
「新しいギリシア神話の誕生」と言われる程に奇跡的だった伏兵ギリシアの戴冠。2004年の欧州選手権は、これ以上ない驚きを以って幕を閉じた。

 昨日は、代表チームがパナシナイコス競技場へ凱旋。何十万という人々が英雄たちを出迎え、周囲一体が正に立錐の余地もない状態となった。

 だが、そんな快進撃の最中、先月30日には代表に5選手を送り込んでいるAEKアテネの破産危機が発覚。ポルトガルでの歓喜とは裏腹に、国内では大きな不安が首をもたげた。

 報じられているAEKアテネの負債額は、1億40万ユーロ。日本円にしておよそ132億5,000万円。未払いの税金、延滞金が多く存在するだけではなく、移籍金や選手の給与についても、未払い金が積もり積もっていると言う。

 OBで、現在はアトレチコ・マドリーでプレーする代表FWデミス・ニコライディスがクラブの買収計画を持ち上げたと言うものの、一選手が投資できる金額などたかが知れたもの。大幅な負債の減額が行なわれないと、破産は免れない状況となっている。

 DFミハリス・カプシス、10番を背負うMFバシリス・ツァルタス、バシリス・ラキスとコンスタンティノス・カツォラニス。そして、大会MVPにも輝いたMFテオドロス・ザゴラキスが、AEKアテネの抱える代表メンバー。

 しかしながら、欧州選手権が終わって2日しか経たないうちにザゴラキスのゼリエA・ボローニャへの移籍が報道されたように、残りの主軸もチームを離れることを余儀なくされる公算は強い。

 AEKアテネは、昨季の欧州チャンピオンズ・リーグにも出場したギリシアの名門クラブ。パナシナイコス、オリンピアコスとともにギリシアのビッグ3を形成し、国内でのタイトルは、ほとんどをこの3クラブで独占してきた。

 設立は、1924年。これまでに11回のリーグ優勝を数え、カップ・タイトルも13コ獲得している。欧州の舞台では、1977年のUEFAカップで準決勝に進出。1997年のカップ・ウイナーズ・カップでも準々決勝進出という成績を残している。

 黄金期は、欧州カップでの躍進が光った1970年代後半。
1978年にはクラブ史上2度目となる二冠を達成し、翌シーズンにかけてもリーグ連覇を果たしている。また、1992年からリーグ3連覇を果たした時期も三度目の黄金時代と言ってよいだろう。

 ライバル、パナシナイコスが1971年のチャンピオンズ・カップで決勝に進出したのが最も輝かしい栄光だったギリシアでは、国内リーグの活況とは逆に内向きのベクトルしか存在して来なかった。

 当然、海外へ出る選手もほとんどなく、オリンピアコスからインテルへ移籍したMFグリゴリス・ゲオルガドス(現EAEKアテネ)が目立つ程度。
 今でこそ、前述のニコライディスやハリステアス(ブレーメン)のようにレベルの高いリーグで活躍する選手も増えているが、まだまだそれも少数派と言えよう。

 AEKアテネから旅立った選手で真っ先に思い浮かぶのは、欧州選手権の準決勝、チェコ戦で決勝ゴールを挙げたトライアノス・デラス(現ASローマ)。それが、今オフはポルトガルでの大活躍とクラブの困窮が重なり、多くの選手が国外に流出することは必死。
以前、セビジャでプレーしていたツァルタスには、再びスペインのクラブが興味を示していると伝えられ、エースキラーとして活躍したカプシスにも複数のオファーが届いている。

 これまでは、ジオバンニ、カランブーといった著名な選手がギリシアに来ることはあったが、いずれも欧州のビッグ・クラブでピークを越えた後でのこと。
 
どちらかといえば、選手の輸出国ではなく、輸入国だったギリシアだが、欧州選手権での偉業で風向きも180度転換される可能性さえ感じさせる。

発祥の地、アテネでの五輪が開催される2004年は、サッカー界にとっても大きな変革の年。

 イタリアではフィオレンティーナ、イングランドではレスター・シティ。
フランスではモナコが深刻な経済危機を迎えた。
 とはいえ、新しいクラブとして再出発を強いられたフィオレンティーナは、来季からのセリエA復帰を果たし、モナコはチャンピオンズ・リーグ決勝まで駒を進めた。

 ビッグ3の一角、AEKアテネが破産ともなれば、他のクラブにも影響が出る懸念が拭えないが、裁判所の決定が伝統あるクラブを完全に無きものとすることはないものとも思える。

 チームを去る選手や職を失う選手が出て来ることも、一時的な痛み。
この夏の興奮を知った若い芽は、必ず大きく育って来る。
次代のギリシアとAEKアテネを背負う選手が、これまでに経験しないほど豊富な養分を与えられたことは、間違い無いのだから。

著者:らいてぃー 

 
 
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