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| 2004/07/08掲載 |
| 【チームの愛称】 |
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昨日、一般から公募していた女子代表チームの愛称がJFAより発表
された。「L(エル)ブルー」「ヤタガール」などとあった候補の中から選ばれたのは、「なでしこジャパン」。古くからある大和撫子という単語を、半分英語に置き換えただけの単純なものであるが、奇をてらった感もなく、響きも良いのですんなりと受け入れられるのではないか。
チームの愛称。これは、世界中の代表チームやクラブチームに広く存在する。イタリアはアズーリ、セルビア・モンテネグロ(旧ユーゴスラビア)ならプラーヴィ、ウルグアイはセレステ。これらは、代表チームの愛称として頻繁に使われている。一方、カナリア軍団(ブラジル)、オレンジ軍団(オランダ)のように、文脈の中で出て来る別称もあるが、こちらは常に一般から使用されるほどの言葉ではない。
これに対し、アフリカ諸国では、必ずと言ってよい程に代表チームの愛称が存在し、広く定着している。有名なところでは、ナイジェリアのスーパーイーグルス、カメルーンの不屈のライオン、南アフリカのバファナ・バファナといった辺りが挙げられるが、余り知られていない国にも愛称は付いている。
ここで、アフリカ諸国における代表チームの愛称をざっと並べてみる。
(五十音順)
アルジェリア:デザート・ウォリアーズ(砂漠の戦士)
エジプト:ファラオス(ファラオ王)
ガーナ:ブラック・スター(黒い星)
ガンビア:スコーピオンズ(サソリ)
コートジボアール:エレファンツ(象)
ジンバブエ:ウォリアーズ(戦士)
セネガル:ライオンズ(ライオン)
ナミビア:デザート・ラッツ(砂漠のネズミ)
ボツワナ:ゼブラス(しまうま)
モロッコ:アトラス・ライオン(アトラス王のライオン)
こうしてみると、その国を端的に表す愛称がうまく付けられており、広く浸透し易いのも理解できる。
これはクラブレベルでも同じこと。母国イングランドやスペイン、イタリアなどのクラブをみても、多くのチームが正式なクラブ名とは別の呼び名を備えている。
レアル・マドリーの白い巨人や、フィロレンティーナのビオラは余りにも有名だし、バルサといってFCバルセロナのことだと分からない人は少ないのではないだろうか。
しかし、こうしたチームのニックネームも知られているのは一部だけ。
スペインリーグのクラブには愛称を持つ所が多いのだが、それ程知られている訳ではない。アトレチコ・マドリーのコルチョ・メロス(マットレス・メーカーの意)やエスパニョールのロス・ペリキートス(いんこの意)は、耳慣れないであろうし、ベティスのヴェルディ・ブランコス(緑と白の意)もMARCAやASといった現地紙で見かけることは少ない。
一方、イングランドでは、全てのクラブが愛称を持ち、新聞や雑誌の紙面でも頻繁に使用されている。マンチェスター・Uのレッド・デビルスやアーセナルのガナーズは日本でもお馴染みとなっており、ニューカッスルのマグパイズ、エバートンのトフィーズといった名称も、専門誌やネットの世界では日本語で十分に通用している。
また、ニックネームの浸透度が段違いであることを示すものとして、その単語がスタジアムの中に描かれているところが多いことも、特長の一つである。来季からプレミア・リーグに復帰するクリスタル・パレスのホームグラウンド、セルハースト・パークには、ゴール裏にパレス、イーグルスという2つの別称が階を違えて見る事が出来るし、世界最古のクラブでもあるノッツ・カウンティ(マグパイズ)や大火災で有名となったブラッドフォード(バンタムズ)のホームでは、バックスタンド全体に愛称がペイントされている。
ファンもチームを愛称で呼ぶ頻度が高く、ウルブスのように正式名称が長いチームでは、完全に愛称との使用頻度は逆転されている。
(ウルブスの正式名称は、ウォルバーハンプトン・ワンダラーズ)
但し、ブライトン&ホーブ・アルビオンやウエスト・ブロムウィッチ・アルビオンといったクラブではそれぞれ、シーガルス、バギーズというにニックネームを持つものの、短縮形となるブライトン、ウエスト・ブロムといった呼称の方がよく使われている。
こうした愛称の浸透度は、国やクラブによっても様々だが、ときにはとんちんかんな争いをも巻き起こす。ポッシュと言えば、何を連想するか。デイビッド・ベッカム夫人ヴィクトリアがスパイス・ガールズの一員としてポッシュ・スパイスと呼ばれていたのは、英国民なら誰もが知るところ。
ポッシュと言えば、ビクトリア。そんな意識が人々の間にあったことも確かであろう。
だが、こうした状況に慣れきったヴィクトリアは、同じくポッシュという愛称を持つピーターボロ・ユナイテッドに対し、呼称の使用差し止めを求める訴訟を起こそうとしたのである。1934年創設。リーグに加盟したのは、1960年とイングランドでは新参者と言ってもよい程に新しいクラブであるピーターボロ。近年では、ウェールズ代表のサイモン・デイビス(トッテナム)やイングランドU21代表のマシュー・エザリントン(ウエストハム)らを輩出している。
それでも、ヴィクトリアがスパイス・ガールズとなる前どころか、彼女が生まれる前からポッシュの愛称は存在していた。ホームスタジアム、ロンドン・ロードのバックスタンドには大きくTHE
POSHと描かれており、ファンもこんな騒ぎが起きるとは予想しなかったであろう。
結局、ヴィクトリアは弁護士とも相談の上、負けることが確実視される裁判に持ち込むことを断念。とはいえ、愛称に対する英国人の意識が、如何に強いものであるかを示した出来事であったことは間違い無い。
そんな風土の中、実際に愛称を変更したところもある。保守的な英国で
驚くべきことかもしれないが、そのクラブは、アブラモビッチ氏に買収された昨年来、チェルスキーという愛称も定着してしまったチェルシー。
今でこそ、ユニフォームの色をとったブルーズという愛称が存在するが、かつてはペンショナーズと呼ばれていた。
もともとは陸上競技場だったホーム、スタンフォード・ブリッジは、第二次大戦中に軍の施設として使用された経緯もあり、隣に退役軍人を収容する施設を併設していた。このため、年金生活者を意味する呼称が付けられたのだが、施設の解体と共に、時代の流れにもそぐわないとして愛称をクラブサイドから変更することを決定。現在に至っている。
こうしたクラブや代表チームの呼称は、時代を問わずに受け継がれて行くもの。それとは別に、一時代のチームだけを指し示すニックネームがあることも忘れてはならない。強烈な印象を残したチームには、様々な形容がなされ、人々の記憶の中に刻み込まれる。そこには、二度と同じようなチームが生まれることはない、という尊敬や懐古の気持ちを高めてくれる要素も含まれるのであろう。
時代を示す最も著名なチームといえば、1950年代のマジック・マジャール。当時のハンガリー代表は、4年に渡り無敗を続け、1954年のスイスW杯決勝戦まで敗戦を予測する者さえいなかったと言われたほど。
プシュカシュ、ヒデグチ、コチシュと攻撃陣に豊富なタレントを擁し、変則のWMシステムで爆発的な攻撃力を誇っていた。
四半世紀もウェンブリーで無敗を誇ったイングランドを木っ端微塵に粉砕した衝撃は世界中に打電され、魔法の使い手として怖れられた。
これより前に驚異的な強さを誇ったのが、ドイツに併合される前のオーストリア代表。1932年から1934年の2年間で、27戦してわずか2敗。
ドイツやフランス、ハンガリーといった国々を軒並み大差で破り、「ブンダー・チーム(驚異のチーム)」と呼ばれていた。
1934年のイタリアW杯では4位に終わっていたが、シンデラーやシャル、
グシュバイドルといったタレントが成熟した1938年のフランスW杯にも出場できていれば、かなりの確率で優勝していたのではないかと言われる。
また、北半球が戦火に燃えていた時代。南米大陸では「ラ・マキナ(機械)」と名づけられたチームが生まれている。
それが1940年代のリバープレート。リーベルにはミジョナリオス(億万長者)という別称があるのだが、この時のチームはペデルネラ、モレノらを軸として抜群のコンビネーションを見せたアタックを繰り返した。
モヌメンタルの観衆は、一矢乱れぬパスワークや正確無比のシュートに精密機械のごとき驚嘆を覚え、この愛称を授けた。
だが、こうした様々な愛称も、日本では何故か定着することがない。
男子代表にブルーズという愛称を定着させようと、某TV局が必死に連呼していた時期もあったが、結局は監督の名前にジャパンを付けた形しか浸透しなかった。オフト・ジャパン、加茂ジャパン、ジーコ・ジャパン。指揮官の名前をとったチームは、その時々の選手を思い起こさせる効用はあるものの、世代を越えて統一された愛称というのは、まだ存在しないに等しい。
それに対し、Jリーグでは初めから地域名プラス愛称をクラブの呼称としているので、逆に別称が生まれることがほとんどない。
レッズは愛称というよりは、単なる短縮形。新潟や清水のことをアルビやエスパと呼ぶ人達もいるが、若い世代が遣う略語にしか過ぎない。
一部の専門誌でマリノスの記事にカモメを使ったり、レイソルを太陽王と
表記した見出しを付けることもあるが、それが一般にまで伝わることはない。今回、女子代表に付けられた愛称も多くのメディアが実際に使わない限り、すぐに忘れ去られてしまうだろう。
サッカー文化が広く根づき始めたばかりの日本。そろそろ遊び心のある
ニックネームや長く記憶に残るような別称が流布される時期に入っても、良いのではないだろうか。
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著者:らいてぃー
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