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2004/11/15掲載
トヨタカップとサッカーファン
 
20年以上に渡り、日本のサッカーファンの目を楽しませてきたトヨタカップ (インターコンチネタル・カップ)が今年で終わりを告げる。 来年度からは、以前一度だけブラジルで開催された世界クラブ選手権が これにとって代わり、欧州と南米だけで世界一を決めてきた歴史は、転換 されることとなった。

第1回のノッティンガム−ナシオナル戦から数えて今年で25回。 ジーコ、プラティニ、ロマーリオ、フランチェスコリ、ラウル、デル・ピエロ、 ロナウド、ジダンなど来日したスター選手は数え切れない。 日本でサッカーが完全なマイナースポーツの位置付けをされていた時代 から、世界の超一流がタイトルをかけて争う試合が国立競技場で行われて 来たことは、驚嘆に値する出来事でもある。

日韓W杯以後、舞台を横浜に移しているが、真の本物が間近で観られる 世界一決定戦は、ファンにとっても特別な意味を持っていた。 スタジアムは、常に満員御礼。唯一、大雪の降る中で行われた1987年の FCポルト−ペニャロール戦だけが、スタンドに空席を作っている。 両大陸のトップが覇を競う意義の大きさは、カードに関わらず名勝負を 生んで来たし、世界の潮流を肌で感じる貴重な機会であった。

以前は、当日券も出されていたが、1990年代に入ると、チケットデザイン もオリジナルのものではなくなり、前売りで完売となるのが当然のように なっていった。 近年ではACミラン、レアル・マドリーなど日本でも人気の高い有名チーム が来日。日韓W杯によるサッカーブームも手伝い、チケットを持たない人も 当日の競技場周辺に大挙して現れるまでになった。

だが、今年はその様相も一変。チケット発売は先週末の土曜日だったが、 月曜日現在、未だにチケットは完売していない。

ポルト対オンセ・カルダス。このカードに魅力が無いと言う人もいるだろう。 欧州ならイタリア、イングンランド、スペイン、ドイツ。南米ならブラジルか アルゼンチンのビッグクラブが来ること望むファンが多いのも、理解できる。 とはいえ、かつてレッドスター対コロコロという今年以上に地味な印象を 覚えるカードでも、国立競技場は埋め尽くされた。

1991年当時、サビチェビッチやミハイロビッチ、ユーゴビッチらの選手たち はまだそれ程知られておらず、世界的な名声もなきに等しかった。 コロコロに至っては、チリ有数のビッグクラブにも関わらず、チーム名さえ 浸透していなかった。 そんなカードでも、サッカーファンは楽しみにして小雨混じりの日曜日に 足を運び、解体前のユーゴスラビアが生んだ珠玉のチームに目を見張った。

なのに、今年の何故チケットは余ったままなのか。理由は幾つかある ような気がする。

まず、年齢的な意味ではなく、若いサッカーファンにはネームバリューが 全てであること。 自分の知っているスター選手がいないチームには、関心を持てない。 特定の国の特定のクラブにだけ価値観を見出すため、欧州王者という冠 が意味を成さないのだ。 サントス復権の立役者となったMFヂエゴに、サンパウロで活躍し、すでに セレソンの常連であるFWルイス・ファビアーノなど、ポルトには魅力的な 新戦力も在籍するが、それも大した影響を及ぼすことはなかった。

南米のスター選手が軒並み欧州のクラブでプレーする現在。欧州対南米 の構図が完全に色あせて来たのは、経済的な側面からして致し方ない。 昔は欧州代表チームに南米の選手がいることは少なかったが、近年では ロベルト・カルロスが母国のクラブからゴールを奪い、エウベル、ピサーロ、 ソラリなど南米のフル代表経験者も欧州の代表としてトヨタカップを手に している。

サッカーにおいても情報過多の時代。欧州チャンピオンズ・リーグなどの 試合を海外で観戦した経験を持つ人も珍しくない中、トヨタカップの価値が 欧州偏重の機軸の中で埋もれてしまったのも頷ける話。 来日時にはメンバーも変わり、欧州と南米による世界一戦といえども、 頂点を争うに相応しいチームではないとする人がいても不思議ではない。

とはいえ、これは些か寂しい見識。ステアウア・ブカレストにレッドスター、 ベレス・サルスフィエルド。いずれも日本での知名度はなくとも、トップクラス の実力を如何なく発揮した。 ポルトにしても、1987年に来日した際にはポルトガルの新興チームという 扱いを受けていたが、半袖のユニフォームで戦った雪の中、寒さを吹き 飛ばすような熱戦を見せてくれた。

突出したスーパースターがいないからといって、タイトルマッチの興味が 削がれる訳ではないことを、両チームの選手が証明してくれることを期待 したい。

また他方で、現在のチケット販売方法も空席を増やす要因の一つ。 今年も、発売初日はインターネット及び電話受付のみとなっていたが、 サッカー関連の発売日には電話もネットもつながらないという状態が 日常化し過ぎて、争奪戦に参加しない人も多いものと推測される。

チケットゲッターなる人種が横行し、チケット販売前からオークションサイト に多数のチケットや予約番号が出品される現況で、諦めの気持ちに支配 されている人は少なくないはず。 以前のようにプレイガイドに並んで買うことも出来ない中、金券ショップに ばかり欲しいチケットが並ぶ昨今。TVで十分と考える人が増えてもおかしい ことでではない。

それに加え、チケット配分方法の変化にも対応出来ていない層が多い こともあるのではないか。 トヨタカップに限るが、90年代半ばまでは、CNプレイガイドとぴあに多くの チケットが割り当てられていた。

それが現在ではネット販売が中心となり、サッカー協会もぴあからネット 販売をメインとする業者(楽天、e+プラス)に大きくシフトさせている。

現在、日本代表の試合は登録抽選制度に変わっているが、それもNTT のナビダイヤルなどを利用した利用者に負担が大きくなるものへと変化 している。 しかも、日本サッカー協会のHPでチケットの申し込みをすると、e+(プラス) の台紙に印刷されたチケットを楽天が送付して来る。

この不思議な構造に、いぶかしい思いをした人も多くは無いだろう。 要するに、日本サッカー協会に個人データを登録したつもりが、何の承諾 もなしに、2つのチケット会社と1つの電話会社にも出回るのである。

数年前まで日本サッカー協会の後援会では、会員カードをチケットぴあの ものとしていたし、サッカー協会で用意するチケットもぴあのものが多かった。 JFAはチケット販売を隠れ蓑にして個人情報を垂れ流す組織になっている とも言えよう。

店頭から電話受付、インターネットへとメインの販売方式が変わるのは、 時代の流れとしても、結局、ファンが食い物にされているだけに思える。

何より、チケットの値段がそれを如実に示している。今大会のチケット 料金は、一番安い席で7,000円。最も高額の席では1万5,000円となる。 この価格設定は昨年度から据え置いたものとなっているが、日韓W杯 開催時のグループ・リーグの値段に準じたものであることは明白。 (日韓W杯でのグループリーグ、カテゴリー3が7,000円。)

1999年の大会で、初めて最高額の指定席が1万円の大台に乗ったと 話題となったが、翌年も更に値上げされ2001年には、最低価格が5,000円 にまで跳ね上がった。 90年代半ばまではゴール裏に自由席も設定され、小学生、中高生料金も 存在していたのに、わずかな期間でこれだけの高騰。 需要が多ければ、どんな値段でもファンは着いて来るものとして足元を 見られているのだろう。

ちなみに20年前の大会では、A席一般が1,500円、SA席で2,500円。 S席でも3,000円だった。プラティニが来日した1985年でも、小学生なら 500円で観戦出来た時代というのは、今や遥か彼方となっている。

20年前の料金では賃金上昇率等もあって比較対象とはならないだろうが、 この数年の物価上昇指数を鑑みれば、1990年代後半以降の度重なる 値上げは、経済学上も妥当なものとは言えないはず。

長く12月の第2日曜日に固定されて行われていた試合が平日に移行し、 更には全席指定となることで、ちびっこファンの姿は大幅に減少した。 多くの少年、少女にとってトヨタカップが非常に敷居の高いものへと なったのは、JFAにとっての本意なのだろうか。

日本代表の試合も、自由席が2,500円で固定されていた時期が続いた後、 仏W杯を境に3,000円に値上げされた。 アトランタ五輪代表の試合は、フル代表とは差別化されて安い料金設定 となっていたが、シドニー五輪予選では完全にフル代表と一体化。 アテネ五輪前には食傷気味になるほどに組まれた国内の親善試合でも、 その価格体系が揺らぐことはなかった。

乱発してマッチメイクされる国際試合に、チケットの値段を不当に感じる 人も少なくないはず。 ネット販売でチケットを購入した際の法外な輸送費にも、立腹している人 は多いだろう。

その上、チケット以外の部分でもサッカーファンは金の成る木として 扱われている。 J1勢も出揃った天皇杯。そのプログラムも昨年度までは1,000円で出場 全チームが掲載されたものであったが、今年からは4回戦用のプログラム と称して500円で販売されていた。 傍目には値下げであるが、メンバー表はモノクロで全体写真も無し。 トーナメント表が進むに連れて別途プログラムを製作することで、ファンの 懐から搾り取る額を増やそうとしているようにも感じられる。

今年より9月から全国大会を始めたため、Jリーグ勢の登録メンバーに 流動性が高い側面もあろうが、それならば、クラブに在籍する選手を 全て載せておけばよいこと。 誰も情報量の低下したプログラムに魅力は感じない。

また、現在トヨタカップのプログラムは、1,500円となっているが、これも 2002年からは紙質が変わり、薄っぺらいものとなった。 1,000円だった時代が長く続いた後、いきなり500円も値上げされた際にも 驚かされたが、しっかりした作りで内容も身のあるものとなっていただけに、 非常に残念な思いがした。

チケット料金を値上げし、プログラムの質も低下。これではファンをバカ にしているとしか思えない。 W杯のチケット料金も、日韓大会よりドイツ大会の方が安価なものとなる ことが決まっているのに、日本では搾取ばかりが進んでいる。

サッカーファンの財布は打ち出の小槌ではない。 度重なる料金の値上げに加え、サービスの低下。最後のトヨタカップと いえども、これまで支えて来たファンが離れている事実は、少なからず あるだろう。 杜撰なチケッティングにより空席が目立ったW杯に続き、虫食いのスタンド が映されることも十分に有り得る話。

「良いものをより安く。」というキャッチフレーズで商売をする業界もあると いうのに、サッカー界はデジタル・デバイドも無視して、金持ちの娯楽となる 方向へ傾いているとも言われる。

スポーツが興行として成り立つのは、ファンがあってこそ。 スポンサーを中心として、選手に法外な金額を与えるだけの世界が潮流 となれども、日本がそれを真似る必要は無いはず。 底辺で支えるファンをないがしろにするようでは、未来も危ういものと なろう。

<参考:近年のトヨタカップ料金一覧>
2004年 ポルト対オンセ・カルダス
2003年 ACミラン対ボカJrs(横浜国際)
カテゴリー1:15,000円  カテゴリー2:12,000円
カテゴリー3:10,000円  カテゴリー4:7,000円


2002年 レアル・マドリー対オリンピア(横浜国際)
2001年 バイエルン・ミュンヘン対ボカJrs(国立)
カテゴリー1:13,000円  カテゴリー2:10,000円
カテゴリー3:8,000円  カテゴリー4:5,000円


1999年 マンチェスター・U対パルメイラス(国立)
SS席:10,000円 S席:7,500円 SA席:6,000円 A席:3,500円

著者:らいてぃー 

 
 
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