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2005/01/09掲載
【頂上決戦は鹿実対市船に】
 
最後に覇権を争うことになったのは、ともに通算47勝を挙げている東西の 名門校。 鹿児島実業と市立船橋の組み合わせとなった頂上決戦は、6年ぶり2度目 のこととなる。

快晴の土曜日、5年連続の決勝進出に王手をかけていた国見に「待った」 をかけたのは、九州での好敵手。 序盤から積極的な姿勢を見せる鹿児島実が国見を自陣に釘付けにし、 意外な展開で幕を開けた。

高い位置でプレスを仕掛け、早めに早いクロスを送り込む鹿実に対し、 DFラインを上げられない王者国見。 鹿実は右アウトサイドの渡辺辰を軸に深く押し込み、トップの2人がDFの 裏へ回り込むような動きを多用して敵をかく乱。主導権を握る。

前線にロングボールを当て、落としたボールを中盤が外のスペースへ 素早く展開して圧倒的な走力とパワーで押し込むという国見お得意の パターンは、岩下を軸とした鹿実のDFが簡単にくさびを入れさせない ため不発に。こぼれ球にも赤尾と三代の2年生ボランチ2人が目を光らせ、 国見の自由を奪う。

流れは完全に鹿実。そうなると、勢いが意外な風穴を開ける。 15分、ストッパーの西岡がこぼれて来たボールを拾い、ゴール前で 競ってくれることを期待して前へ送る。 明らかに単なるロビング。だが、ボールは風に乗り国見のゴールへ。 予想外の軌道に慌てた国見のGK原田は、下がりながらも必死に手を 伸ばすものの、ボールは指先をかすめてクロスバーとの間に落ちて行く。

ボールがゆっくりゴールに吸い込まれたことが分かると、あまりに 唐突な先制ゴールにスタンドが大きくどよめく。

先制されたことで目の覚めた国見。ボランチの出崎がポジションを前に 移してパンチ力を見せると、前線のトライアングルもポジションを入れ替え ながら推進力を高める。

DFラインも立て直して高い位置取りをキープ。ゴールキックの際には、 GK以外の20人が全てセンターサークルの幅に収まるほどにコンパクトな 形を作る。

プレーエリアが上がって来たとはいえ、うまく左サイドを使えない国見。 左のボランチに入っている木村が完全にフォアストッパーのような役回りで 上がる気配さえ見せない上、左アウトサイドの渡辺三が対面の渡辺辰を 気にして引き過ぎてしまう。

逆に鹿実は、ボランチの赤尾が遠くまで見せていることを感じさせる 配給を行い、各所で巧みに身体を入れて最終ラインの負担を軽減する。

しびれを切らした国見ベンチは、前半終了を待たずにFW田中政を小柄な アタッカー本吉と交代させ、2列目からの飛び出しに活路を見出そうとした。

後半、思惑通りに早いボールへの集積がリズムを生む国見は、エース 渡辺千が右からのクロスに強烈なボレーを見舞ってサイドネットを揺する。 単純に外のスペースへ放り込み、自信のある体力勝負に出ることで サイドアタックを実現させて行くが、頑強な砦を築く鹿実の3バックは冷静に 対処。特に主将の岩下は、広い範囲を的確にカバーして空中戦でも良い位置 取りを見せて、フィニッシュに入る形を幾度もつぶしていた。

鹿実は、国見DFのクリアミスからGKと1対1になったことで喉から手が 出るほどに欲しい追加点をもぎとるチャンスもあったが、ゴール右に外して しまい、息のつけない流れが続く。

後半も半ばに入り、前線でのターゲットを増やすために中筋が投入され、 国見のパワープレーに拍車がかかる。

しかしながら、同じパターンの攻撃が長く続いていたことで、鹿実には 守備のリズムが生まれ、セカンドボールを拾えなくとも簡単にタッチラインへ 切ることで時間を稼ぐ。前掛かりになったところをFW山下を軸とした攻撃陣が鋭く突き、相手の 疲弊を強めていく。

同点に追いついたことを想定し、国見はPK戦に備えてGKを交代させる。 高校サッカー界の盟主が意地と底力を見せるのかに焦点は絞られた。

それでも、残り時間も10分足らずとなったところで得た鹿実の右CK。 ファーサイドに飛んだボールはヘッドでクリアされたが、これを拾った赤尾が 右足を振り抜くとボールは力強い弾道でゴール右隅に飛び込み、2-0。 試合を決定付ける1点にチームメイトが次々と駆け寄って行った。

結局、国見は1点も返すことが出来ないままにタイムアップ。 がっくりと膝を折る選手たちは、驚嘆するようなプレーも見せることが 出来ないままに終戦を迎えた。

U20代表のFW渡辺千も完璧に封じ込めた鹿実の守備が、高い集中力を 持って、しっかりと戦況を把握していたことが最大の勝因。 縦のラインにキープ力の長けた選手を配置し、慌てることのない試合を 続けていることは、現チームが如何にバランスのとれた構成になっている のかを証明していたと言えよう。

鹿児島実業 2(1-0/1-0)0 国見
得点者:西岡(15分)赤尾(72分)

優勝候補の最右翼と言われてた覇者の敗退後、鹿実への挑戦者を 決める戦いは、さらに壮絶なものに。 高校サッカー界最高の司令塔とも称されるMF本田を擁する星稜に対し、 カテナチオを伝統とする東の横綱市船には、渡辺広という圧倒的な 存在感を示す壁がそびえ立つ。

互いの主軸が攻守に分かれていた点では、第1試合と同じであったが、 内容はまったく毛色の異なるものとなった。

キックオフからわずか4分、いきなり試合が動く。 市船陣内で星稜が右サイドからのスローイン。投げ入れたボールは簡単に クリアされたが、MF大畑が素早くゴール前へ送ると、ゴール前にいた MF田宮が足を伸ばしてコンタクト。 1-0、国立に初めて足を踏み入れた星稜が先手を奪う。

しっかりと中盤を作る意識の高い星稜は、サイドに流れた選手がドリブル を多用して積極的に勝負する。 MF出村がトップスピードで切れのある方向転換を見せれば、田宮や綿谷も 素早いターンで前を向く。

市船もサイドで起点を作る意思を見せるが、高い位置でボールを奪えず、 ペースを引き寄せるには至らない。 左からはサイドバックの薬袋が上がり、MF壽も前線へ飛び出す動きを 繰り返して受け手を増やそうと試みる。 右では、1年生とは思えない動きを見せる小山が果敢にボールにアタック して行く。

全般的な支配率は上がらないものの、29分、市船が一瞬の隙をつく。 ペナルティエリアの手前で鈴木からボールを受けた小山は、キックフェイント で左へ動くと、左足を強振。 ボールは真っ直ぐにゴール左へと飛んで行き、ネットを揺すった。

タイスコアとなったことで、お互いの矛先が一旦収まるピッチ上。 中盤での攻防が続き、トップに入るボールも減った状態で前半を折り返す。

後半、星稜は先制弾を決めた田宮を下げて塩原をトップへ入れ、完全な 2トップにシフトさせる星稜。 だが、プレスが弱まった上に、前半から足を引きずり気味だった本田の 足も止まってしまう。

こうなると、市船の運動量が生きて来る。 もともと、敵の門を狙うパスが多かったが、これに加えて前半は少なかった くさびのパスが簡単に入るようになり、攻撃の厚みが増す。

仕事量の少なかった榎本と本山を交代させて、ポスト役もリフレッシュ。 壽が度々起点となって好配給を見せ、FW森野も外へ流れて2列目との 良い関係を作り出す。

星稜は、左にいる橋本と綿谷からの攻撃ばかりで右サイドを使えない。 左からのスローインに本田が頭で流し、橋本が狙ったボレーも大きく 吹かしてしまい、勝ち越し点を奪えない。

後半も残り15分となったところで、市船はジョーカーを切る。 森野に代えて絶対的なスピードを持つ白山を投入。 群を抜く早さでボールを追い回す選手が現れたことで、星稜のDF陣は 明らかに嫌がるそぶりを感じさせた。

そして、この交代策はずばり的中。69分、星稜のパスミスで市船にボール が渡り、ロングボールが出る。先に追いついたかに見えたのは、星稜のDF であったが、背後から驚異的な加速でボールをさらっていったのは白山。 2人を圧倒的なスピードで瞬時に抜き去ると、あとは冷静にゴールへ 流し込むだけ。

誰もが目を見張る電光石火の一撃で、市船が貴重な2点目。 常に冷静沈着なCB渡辺広を中心とするDF陣が揺らぐ場面も少なかった だけに、残り時間からして勝負はついたかのようにも思われた。

実際、綿谷に代えて長身FW三木を投入した後も、得意のショートパスが うまくつながらず、星稜には焦りの色が強くなるばかり。 本田もボランチの位置まで下がっては、自分が供給役にならなければ という思いを見せていた。

ロスタイムに入り、自陣コーナーフラッグの付近で時間稼ぎのキープを された後にも、本田がFKのキッカーを務めてしまうなど、なりふり構わない 様子が痛々しくも感じたほど。

ところが、この本田のFKから望みはつながれた。 電光掲示板の表示も消えた中、左CKを奪った星稜。誰もが最後のチャンス であることを分かっていた。 橋本の蹴ったボールは、ファーサイドで待ち構えていた大畑のもとへ。 胸でトラップしながら敵をかわすと、右足で強烈なシュート。 魂を込めたフィニッシュは激しくネットに突き刺さり、本当に最後のワンプレー で星稜が同点に追いつく。

折り重なって喜ぶ選手たち。スタンドからは、この日一番の歓声と拍手が 響き渡り、星稜の応援席からは悲鳴のような雄たけびがこだましていた。

死力を尽くした激闘は、2-2のままPK戦へ。 決勝までの日程が一日空くこと、国立という特別な舞台であることを考えれば、 延長戦を行っても良いのではないかと思う人も多いだろうが、レギュレーション は変えられない。

星稜2人目の橋本がバーの上に外し、市船4人目の薬袋はGKにセーブ される。 サドンデスとなった6人目、壽が成功させたのに対し、三木のキックは クロスバーを越えて行き、壮絶な戦いに終止符が打たれた。

敗れたとはいえ、星稜は国見に完勝した経験も持つ高い実力を存分に 発揮。しっかりと中盤から組み立てる意識の高さは準決勝に残った4チーム の中で最も高く、勝負すべきところとセーフティーにすべきところをチーム 全体がよく理解していた。 レギュラークラスに2年生を多く残し、来年も国立に戻って来る可能性は 十分にあるだろう。

そして、緒戦の東福岡戦に続いてPK戦を乗り切った市船は、PK戦負けが 続いていた歴史を払拭するかのような粘り腰を見せての決勝進出。 タレントでは過去のチームに比べて明らかに小粒であろうが、球際の 執念深さや好機を逃さない目を持ったたくましさには、伝統の底力を見た 気がする。

前回、鹿実と決勝で当たった際にも、準決勝はPK戦の末に前橋育英を 振り切って栄冠をつかんでいる。

ちょうど10年前の初優勝以来、国立では不敗を誇る市船が2年ぶり5度目 の戴冠を狙う一方、これまでに3度進んだ決勝の舞台では1分け2敗と勝ち のない鹿実。 今大会の戦いぶりだけを見れば、攻守にバランスの取れた鹿実に分が あるとみる向きも多いだろうが、インターハイでも最後に涙を飲んだ市船は、 優勝を渇望する気持ちで負けている訳もない。 チーム力に大きな差はないはず。負けたくない気持ちとゴールへの意欲。 それに小さなミスや幾つかの運が重なって勝負を分けることだろう。

市立船橋 2(1-1/1-1)2 星稜
        PK 5-4
得点者:市船−小山(29分)白山(69分)
     星稜−田宮(3分)大畑(79分)

PK戦
市船)鈴木○本山○谷津○薬袋×渡辺○壽○
星稜)本田○橋本×清水○出村○込山○三木×

著者:らいてぃー 

 
 
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