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2005/01/13掲載
【第83回高校選手権を終えて】
 
城陽(京都)北川の見事なFKに始まり、史上初のPK戦を経て鹿児島実が 悲願の単独初制覇。 今年度の高校選手権では、攻撃の選手に昨年の平山やカレンのような スター候補が不在だったことから、鹿実の岩下や市船の渡辺広など守備の選手にスポットが当たった大会となった。

決勝戦がスコアレスに終わり、得点王にDFの選手が輝いたことも、そうした 傾向を象徴したもの言えよう。 得点王となったのは、鹿実のFW山下と前橋商のDF糠谷で、ともに4得点。 昨年9得点を挙げた平山が特別な存在であったとしても、4得点というの 随分と少ない数であり、昭和天皇の崩御により大会日程が順延された 第67回大会以来となる低調な数字となった。

山下は緒戦の修徳戦でハットトリックをしたものの、あとは多々良学園戦 での1得点のみ。5試合のうち3試合でノーゴールというのは、ポイントゲッター として寂しいものであろう。 これに対し、現鹿島の金古(東福岡)以来、久しぶりにDFとして得点王と なった糠谷は、2回戦、3回戦で2得点ずつ。セットプレーに抜群の強さを 見せて久しぶりの準々決勝へと導いた。

ハットトリックを記録したのは、計3人。市原入りする済美の堀川と、福岡に入団が内定している国見の城後、そして鹿実の山下。 いずれもチームの初戦で達成したものであり、3回戦以後に3得点を 挙げた者は出なかった。

とはいえ、目を引くFWがいなかった訳ではなく、早期敗退となったチーム にも優秀なタレントは存在した。 那覇西の比嘉啓は、幅広い動きからゴールへの高い意識を見せるタイプ であり、惜敗した星稜戦でも惜しいシュートを放っていた。 オーソドックスなCFであった盛岡商の福士は、フィニッシュに持ち込む速さ が特長。国見からも鮮やかなゴールを決め、頼れるエースとして十二分な 活躍をしたと言えよう。

もちろん、国見の渡辺千も傑出したレベルにある選手だったが、昨年の平山が余りに強いインパクトを残したため、比較されて小粒な印象を持たれたかもしれない。

中盤の攻撃的な選手では、一つ上の先輩を追うようにJクラブへ進む2人 が双璧となろう。 増田がいる鹿島へ行く鵬翔の興梠。そして、豊田と同じ名古屋へ進む 星稜の本田は、タイプこそ異なるもののチームの軸として活躍。 前評判通りの高い能力を存分に知らしめた。

青森山田の小寺や鹿実の坪内、渡辺辰も非常に安定したプレーを見せてチームを牽引。 多々良学園の谷本はメリハリの効いた動きで度々攻撃の起点となり、 市船の壽もミスの少ない好選手であった。

守備の選手では、やはり鹿実の主将岩下が最も印象深い。 カバーするエリアが広く、危機察知能力にも長けたポジショニングは、鹿実の守備が大崩れしなかった主要因。 岩下の前で積極的に身体を張っていた赤尾は、奪ってからの展開能力 にも優れており、巧みな身体の使い方も強く印象に残った。

市船の頑強な壁となった渡辺広に星稜の込山と作田のコンビも非常に堅さと強さを感じさせるCBであり、空中戦での安定度も高かった。

また、セットプレー時に大きな武器となっていたのが、得点王となった前橋商の糠谷に、多々良学園の西嶋。ポイントに飛び込む迫力は、 多くの相手に恐怖感を与え、実際にチームを救う貴重なゴールも叩き 出している。

GKでは、優秀選手にも選ばれた市船の中林や鹿実の片渕が非常に 良いプレーを連発して守備を引き締めていたが、2回戦で消えた東福岡 の坂本も柔らかなキャッチングを見せる好素材であった。

しかしながら、すでに高校選手権で同世代のトップクラスに位置する 選手たちを見ることは少なくなっている現状がある。

優秀なタレントが数多くJクラブのユースを選択する傾向が強まり、 特に複数のJクラブを持つ地域からは強いチームが生まれることは、 かなり難しい情勢となっている。

その煽りを最も受けているのが、首都圏の学校であろう。 高校選手権は関東の4都県で行われる大会であるため、地元のチームが勝ち進むと必然的に盛り上がりを見せるが、準々決勝まで残ったのは市船と前橋商だけ。栃木、茨城、埼玉、神奈川、東京の5都県では、初出場校が出場して おり、めぼしいタレントを揃えるのに苦労していることが伺える。

来年以降の大会を占う下級生の活躍も目立たず、今大会のメンバー表を眺めても、前橋商のGK土田、青森山田のFW小澤といったU16代表歴を持つ選手は数少なかった。 昨年9月に行われたアジア・ジュニア・ユース選手権では、代表メンバーのうち、高校のサッカー部に所属している者はわずかに5人だけ。選考合宿においても、高校からは7人しか選ばれなかったのだから、それも当然の数字。

かつては高校選手権が次代を担う選手の憧れであったが、Jリーグと いう受け皿がある以上、優秀なタレントは少しでも早く日本のトップリーグ でプレーすることを望むのも致し方あるまい。

15歳でJリーグにデビューする怪物まで現れた今、高校選手権は大きく その質を変容させている。 とはいえ、全都道府県から代表校が集い、郷土の誇りを背負っている ことは、誰もが応援するチームを持てる意味でも廃れるはずはない。 Jユースに進めなかった、受からなかった者のリベンジの場としても 存在し続けるであろうし、何よりサッカーをする者全てがプロを志す訳では ない以上、高校の3年間という濃密な時間を共有した仲間たちとプレー 出来る最後の場が、淡白な試合を生む訳もない。

長く感動を覚える試合を多く生んで来たことは、甲子園とも根は同じ。 涙と歓喜の時を分かち合う場として、選手権の存在意義が薄れることは ないだろう。

今年度も生まれた多くの好試合の中でベストゲームを選ぶとすれば、 準決勝の市船−星稜戦になろうか。 ロスタイム中の最後のワンプレーで同点弾が決まった劇的な展開の他、 途中出場の白山が驚異的なスピードで勝ち越し点を奪っており、内容的にも両チームが長短のパスを使い分けた組み立てを意識している点で ハイレベルな展開であった。

1回戦では、西武台と大分の試合。地元の大声援に応えてロスタイム に追いつき、PK戦で勝利した西武台には浦和レッズの影がだぶって 見えた。

2回戦では、屈指の好カード星稜と滝川二が壮絶な点取り合戦を演じた。互いにゴールへの姿勢を前面に押し出し、7つものゴールが生まれても守備の弱さを感じさせることもなかった試合は、くじ引きの結果を呪い たくなる程に熱いものであった。

3回戦は、2点を先取された多々良学園が羽黒を大逆転。CFZ出身のブラジル人選手を複数擁する羽黒と、リベリア人の父を 持つハウバート・ダンの激突は、国際化している社会の縮図とも言える 光景であった。

休息日を挟んだ準々決勝では、好試合が目白押し。市船−鵬翔戦以外は、全て1点差での決着となった。 中でも、国見に前半で3点を奪われながら決して諦めず、必死に食い下がった盛岡商の健闘は光った。

目玉となる選手が少なくとも、その場にいた者たちにとっては一生忘れることの出来ない試合が幾つも生まれたはず。 サッカーでの感動は、レベルの高低によって決まるものではないことを いつも再認識させてくれる高校選手権。冬の風物詩として、温かい目で 見守って行きたいものだ。

著者:らいてぃー 

 
 
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