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| 2005/03/02掲載 |
| 【ウィガン・アスレチック】 |
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ウエスト・ブロムウィッチ、ノーリッジ・シティ、クリスタル・パレス。
今季プレミアリーグに昇格した3つのクラブは、いずれも残留に向けて
厳しい戦いを続けている。
1992年にFA直轄の運営組織となるプレミアリーグが新設されて以降、
巨額のTVマネーが流入し、イングランドのサッカー界は飛躍的な成長を
遂げて来た。
しかし、隆盛を極めるプレミアリーグと下のディビジョンの差はかつてない
ほどに大きくなり、昇格チームがトップフライトを続けることは非常に難しい
こととなっている。
近年の成功例では、チャールトンやマンチェスター・シティ、フラムなどが
挙げられるが、チャールトンとマンチェスター・Cは再度ディビジョン1での
戦いを強いられているし、フラムには資金面での強力な後ろ盾が存在した。
アラン・カービシュリー監督の下で長期的な戦略を実践中のチャールトン、
もともとクラブの規模が大きかったマンチェスター・C。そして、アル・ファイド
一族の豊富な財力により、ケビン・キーガン、ジャン・ティガナと世界的に
名の知れた指揮官を招いたフラムは、それぞれにプレミア定着を果たす
理由が明らかであった。
一方、クラブ史上初のトップリーグ昇格を果たしたブラッドフォードや
大きなスタジアムを持つサンダーランド、UEFAカップも手にしたことがある
イプスウイッチなどは、数シーズンで綻びが出てしまい、陥落して行った。
いにしえの時代には、トッテナムやイプスウィッチのように昇格チームが
即チャンピオンとなる快挙もあったが、今ではそんなシンデレラ・ストーリー
も夢物語となっている。
そんな現況下、今イングランドの2部リーグにあたるチャンピオンシップ
でトップを走るのは、ウィガン・アスレチック。
余程のサッカーフリークでもない限り、耳にしたことはないであろうクラブ
である。
ホームタウン、ウィガンは大マンチェスター市に属する地域であり、
いわばマンチェスター第3のクラブ。
創設は1939年と、イングランドの中では随分と新しい部類に入り、
これまでトップリーグでプレーした経験もない。
元来、ウィガンには1920年11月に誕生したウィガン・ボロというクラブが
存在し、翌年には北部ディビジョン3に加盟。1928-29年シーズンは、
4位にまで躍進して昇格を争うレベルにまで力をつけていた。
だが、1931年。クラブは経営破綻。すでに新シーズンが始まり、12試合を
消化していたにも関わらず、チームを解散してリーグを脱退してしまう。
そこで、翌1932年にウィガン・アスレチックが創設され、ウィガン・ボロが
ホームとしていたスプリングフィールド・パークを購入する。
とはいえ、すでにウィガン・ボロの選手たちも散り散りとなり、後継クラブ
としての地位を引き継ぐには至らず。
フットボール・リーグに加盟することもなく、完全なアマチュア・リーグである
ノーザン・プレミア・リーグに活動の場を求める。
ノン・リーグのクラブとして歩き始めたウィガン・アスレチックは、FAカップ
などでは下部リーグのチームを破ることもあったものの、長く陽の目が
当たる場所には出てくることもなかった。
それが1978年、半世紀以上の時を費やしてようやく4部リーグへの昇格を
果たす。 1981-82年シーズンには、リーグ・カップ3回戦でチェルシーに4-2で勝利。
4回戦では、前年の王者アストン・ヴィラを相手に再戦まで持ち込む健闘を
見せて大きな話題をさらった。
このシーズンに3部まで駆け上がると、1985年には3部と4部のチームで
争われるフライト・ローバー・トロフィー(旧アソシエイト・メンバーズ・カップ)
で決勝に進出。
初めてのウェンブリーにおいてブレントフォードを3-1で粉砕。見事に
クラブ史上初のタイトルを手中にする。
当時の主力は、クラブの出場記録を持つケビン・ラングリー。
最多のゴール記録を持つFWピーター・ホートンも、3部昇格に尽力した
一人だった。
着実な成長を見せるチームは、1987年にはFAカップで準々決勝まで
進む快挙を演じ、ディビジョン3でもプレーオフ進出を決めるなど上位リーグ
に手が届く場所まで辿り着いた。
しかしながら、3部の壁は余りに厚く、再びボトムリーグへの転落も
味わってしまう。
1995年、そんなクラブの流れを決定的に変える出来事が起こる。
元ブラックバーンのデイブ・ウィーランがオーナーを務めるスポーツ用品
小売業、JJBスポーツがウィガン・アスレチックを買収。大きな財政的
バックアップを得ることになる。
JJBスポーツは、英国全土に支店を持つ最大手のスポーツショップ。
サッカーや陸上、テニスなど、扱う商品は多岐に渡り、主要な町には必ず
見かける存在となっていた。
もともと、スタジアムを共有するウィガン・ラグビー・クラブと改修の話を
進めていたクラブは、これを転機にしてスタジアムの新築を決定。
1998-99年シーズンから2万5,000人収容の器へと移ることになった。
(スプリングフィールド・パークは、7,290人収容)
資金力の向上は戦力の充実を生み、1997年にはシーズン31ゴールを
記録したグレム・ジョーンズの活躍もあって、最底辺のリーグから再び
抜け出す。 1999年にはオート・ウインド・スクリーンズ・シールドと名を変えた
下部リーグのクラブによるカップ戦で、ミルウォールを1-0で撃破。
久しぶりの戴冠に酔う。
JJBスタジアムと名づけられた新しいホームに移り、クラブは21世紀に
入ると、プレミアリーグまであと一歩のところまで迫るようになった。
地理的な関係もあり、輩出した著名な選手といえばキース・ギレスピー
にロイ・キャロルとマンチェスター・Uで活躍した選手の名が思い浮かぶが、
古くからのウィガン・サポーターであっても、マンUと肩を並べて戦う日が
来るとは想像だにしなかったのではないだろうか。
コカコーラ・チャンピオンシップでは、先週、ウィガンがミッドウィークの
コベントリー戦で2-1と勝利し、首位に立ったが、週末はサンダーランド
以外の上位クラブが軒並み勝利を掴めず。非常な混戦模様となっている。
トップのウィガンから3位のイプスウィッチまで3チームが勝点66で並び、
自動昇格の2枠を争う一方で、プレーオフ進出圏内を狙う争いも激化。
12位のQPRあたりも、6位までに入る可能性を大きく残している状況
にある。
上位同士の潰し合いもあろうし、ライバルとの直接対決も終わらぬ段階
にあるが、ウィガンは今週3月5日、ホームに3位のイプスウィッチ・タウン
を迎える大一番を控える上、サンダーランドとの対戦もホームで残している。
6位ウエストハム、7位レディング、そしてQPRを相手にしても、ウィガンは
ホームゲームとなるため、眼下の敵を蹴散らすにはこの上ない状況にある。
敵は重くのしかかるプレッシャーだけ。
他を大きく引き離す攻撃力がプレミアリーグの門をこじ開ける確率は、
決して低くはないだろう。
現在のチームを支えるのは、何といっても強力な2トップ。
183センチのジェイソン・ロバーツに175センチのネイザン・エリントン。
この2人だけですでに37ゴール(35試合)を叩き出しており、1試合に1点は
FWが獲ってくれる計算となる。
それでも、ポール・ジュウェル監督は、一昨年、サウサンプトンがFA杯
決勝に進む原動力となったFWブレット・オーメロッドやストーク・シティを
牽引するFWアデ・アキンビィの獲得を画策。
いずれも破談に終わったものの、十二分な保険をかける意欲も失って
いない。
指揮官ポール・ジュウェルは、スティーブ・ブルース(現バーミンガム)
から引き継いだチームをバランス良く仕上げていることで高い評価を
受けている。
ブラッドフォード・シティをクラブ史上初のトップリーグへと導き、自らの
古巣リバプールを相手に最終節でプレミア残留を決めた戦いを記憶して
いる人も多いはず。
80年代半ばに自らもプレーしたクラブを再びプレミアリーグへ上げること
となれば、クラブ初のトップフライトを2度も実現させた最初の監督となる。
現在、チームで最も名の知れた選手は、チェルシーやサンダーランドでも
プレーしたDFエメルソン・トーメだろうが、GKジョン・フィーランを軸とした
守備陣も大きな成長を見せて、DFマット・ジャクソン、MFレイトン・ベインズら
にはプレミアのクラブも興味を示してきた。
すでに2桁得点を挙げているMFリー・マッカロクとロバーツ、エリントンの
不動のスピアヘッドに攻撃の比重が偏り過ぎとの評もあるが、裏を返せば
それだけゴールへの道筋がチーム全体で統一されているということ。
今季のリーグ戦で無得点に終わった試合はわずかに5つ。総得点は
一番多く、総失点も一番少ないウィガンに最も死角が少ないとする見方は
間違っていないだろう。
但し、イプスウィッチのジョー・ロイル監督は、エバートン最後のタイトルと
なっている1995年のFA杯優勝に導いた知将。
マンチェスター・シティをプレミアに昇格させた経験も持っており、1チーム
だけをみすみす走らせる真似はしないはず。
サンダーランドのミック・マッカシー監督にしても、決して軸のぶれない
チーム作りは、アイルランド代表で証明済み。
多彩な経験値を持つ監督たちの知恵比べも佳境に突入する。
これまでの平均観客動員も、1万人を超える程度のJJBスタジアム。
半分以上空いていたスタンドを埋め尽くす熱狂が、シンデレラ・チームの
誕生を後押し出来るのか。
安く仕入れて高く売る。商売の基本を地で行くオーナーのクラブは、
ウエスト・ブロムウィッチにいたロバーツを£140万で買ったのを最高額に、
キャロルを£250万でオールド・トラッフォードに売った商売上手。
綿密な計算に基づいた拡大再生産は、飛びぬけて潤沢な懐でなくとも
可能となろう。 |
著者:らいてぃー
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