U−23ニュージーランド戦リポート
前日からの雨のせいで、随分と暖かい陽気だったが、平日のナイトゲームとなった
国立競技場は、突然の夕立ちにいくらか不快指数を上げていた。そのためか空席も目立ち、バックスタンドの上半分はガラガラ。昨年11月の五輪予選以来、久々にファンの前に帰ってきたU−23代表。中田英は招集できず、小野も膝のねずみの除去手術のために不在となり、指令塔は中村俊輔のみ。
宮本もまだフィットしていないということで招集が見送られたが、DFラインは中澤、松田、
中田浩とアジア杯予選時のA代表そのまま。 右に久しぶりの登場となった市川を配置した
以外は、今までの組合わせを踏襲したメンバーで、特に変わり映えはなかった。試合は、中村の見事と言う他ないFKで先制し、相手のクリアミスに乗じて高原が加点。
後半にも中村〜高原のホットラインから追加点を取り、稲本が持ち込み小島がフィニッシュ
というガンバ・コンビによるダメ押しゴールで4−0という大差がついた。しかし、この試合の意義は、日本にとってどれ程のものだったのだろうか。
ニュージーランドはこの後、シドニー五輪出場権をかけた南アフリカとのプレーオフ(ホーム&アウェー方式)を控えており、日本との対戦を望んでいたかもしれないが、日本側からするとニュージーランドを相手として迎え撃つ意義は余り浮かんで来ない。ニュージーランドには、国内にプロリーグがないため、マンチェスター・Cやクルー(いずれも
イングランド)などに所属する一部の選手を除けば、大学生とセミプロの混成チーム。
当然、技術的にも明らかに日本より劣っていた。 まず目に付くのがキックの種類の少なさ。そして、トラップから次のプレーに移るスピードも随分と遅い。もともと、英国系のサッカーに強い影響を受けているだけに、フィジカル面に長けた選手もいたが、身体の使い方、足腰の強さでも、プロ集団である日本の方が上だった。こうしたことを考え合わせても、五輪予選を通じて力の拮抗した相手との対戦をしていない
日本が必要としているマッチ・メイクではなかったと言えよう。これは、明らかに強化委員会
及び協会のミスである。試合前日にトルシエ監督が、強化日程についての不満をぶちまけたのも分かるというものだ。かと言って、今回の試合内容に高い点を付けられるのかと言うと、そうではない。 一方的なスコアでの勝利に、トルシエ監督は「日本チームはパワーアップした。」と、コメントして
いたが、内容はどうもお寒いものだった。というのも、中村、稲本のという幹がしっかりしていたため、目立たなくなっていのだが、
攻撃面では相変わらずの左偏重が治っておらず、前半、市川の存在は忘れ去られたようになっていた。 これは、トルシエ監督が一貫してボランチが本職の選手に右サイドを任せ、
「攻撃は左から」という形ばかりにこだわってきた弊害といえるだろう。 先のTV番組でも
指摘していたが、右利きの選手が多い日本では、前を向いて強く正確なボールを蹴るためには、どうしても左サイドへの展開が良い確立となるからという理論には一理ある。 しかし、
相手の右サイドが強力だった場合に攻め手を失う危険もはらんでいるのは間違い無い。前半、本山・中村のいた左サイドでは、深い位置まで入ってのマイナスのボールがゴール
前に何度か送られたが、右サイドの市川がそれを出来たのは、前半終了間際の
センタリングの場面、一度きり。 おまけに昨日は、本山自身がサイドで使われる場面より、FWが開いて来ていた回数の方が多いくらいだった。3−5−2というコンパクトな陣形を
採っているにも関わらず、両翼が死んでしまっていては、チームとして機能したとは言い
難い。幸い、指令塔の中村や稲本が、A代表としての核の違いを見せ付けるようなプレーを
連発していたので、そうしたことも綻びには見えなかった。 だが、今後、五輪本戦を
見据えての闘いを考える上では、協会の強化方針(マッチメイク)も、トルシエのこだわりも
命取りとなる危険性があるのではないだろうか。
(FOOTBALL時代の読み物 vol.14 2000/03/30掲載)