検証トルシエJAPAN (後編)

 

そして、次に解任の理由としてあげたいのが、選手選考の不可解さ。 監督が代表チームを編成する場合、基本的に代表に誰を呼ぼうが問題はない。 何故なら選手選考については
監督の専権事項であり、どのようなチームを作るのかは監督の描くイメージや好みによるものが大きいからである。

昨年、ワールドユースや五輪予選という若年層世代での世界に通じる大会があったため、
それに時間を取られ必然的に若い世代の選手たちとの距離は縮まっていった。
翻ってフル代表についてだが、昨年は五輪代表との兼ね合いなどもあり、年齢層で区切ったような編成になることもあり、ほったらかしとなっていた感は拭えない。
だが、その間にトルシエの庇護を受けたU−23代表の選手は、いつのまにか大量にフル
代表へと抜擢されるようになっている。 その中には選出時点で中田浩、曽ケ端のように
クラブでのレギュラーともなっていない選手も含まれていた。

先に重要な公式戦があったため、ある程度の骨格を作り上げたユースや五輪レベルの選手を戦術理解という面で優遇したいのは、分からないでもない。
しかし、フル代表はあくまでもその国のモデルとなるべきトップレベルの選手で構成される
べきであろう。 世代交代は必要だが、その時点で秋田や高桑のパフォーマンスは、彼らより劣るものであったのだろうか。

また、試合に1ヶ月以上試合から遠ざかっている選手を平気で招集する姿勢にも疑問は
ある。 名前だけで選手を呼ぶのであれば、名波のように飼い殺しの選手が代表のスタメンを多く占める日も来てしまうかもしれない。 国内での活躍が正当に評価されない状態と
なれば、国内サッカーの空洞化の懸念も同時に出てこよう。

解任妥当と考える理由その三、戦術。
以前、テレビ朝日の某番組でも取り上げられていたが、今に限らず歴代の日本の生命線が左にあることは明らか。 右利きの選手が多い日本では、前を向いた時に右足(インサイド)で
正確に強いパスを送ることが出来るのが左サイドになるからという理論であるが、これに
がんじがらめにしばられていたのがトルシエ。

「左は守備的なら服部、攻撃的なら本山、両方を求める時は名波。」と、トルシエはその戦略を明らかにしていたが、左を封じられた時の攻撃を何も見つけ出すことは出来なかった。

こうした右サイドを捨てる戦術は、相手にとっては非常に汲みし易いものとなるのは想像に難くない。 右サイドに必ずボランチを本職とする選手を配置することは、果たして良い
バランスといえるのだろうか。 相手が強烈なサイドアタッカーを擁していた場合、こちらの
攻め手が完全に失われることになるのだ。
右サイドの本職でスタメンを張ったのは、トルシエJAPANの中では安藤だけであるが、
名良橋、市川、沢田といった各クラブでの右サイドの専門家は、チャンスさえ与えられずに
いたのだ。

明らかに偏った戦術とそれに固執した選考。トルシエが監督をしている限り、右サイドの
専門家は不遇を囲うことが決まっているのである。

また、彼の代名詞となったフラット3。 あのディフェンスは、余りにリスクが大きすぎる。
速く角度のある長いクロスや、強烈なスピードを持つ2列目の突破を防げないことは、
パラグアイやメキシコとの試合を見れば明らか。

深い位置からのクロスに対処するすべを知らないで、システム変更や戦略の転換を
迫られたのは加茂JAPANの時と全く同じ。 4年前のアジアカップでクウェートにあっけなく
やられたことを思い出す人も多いことだろう。 W杯本戦で、ノルウェーのような自分たちの
スタイルだけで強引に押し通して来る相手と対した場合にフラット3では持ちこたえることは
出来ないのではないか?

トルシエ自身が、サッカーに関して多くの引き出しを持っていることに疑いはないが、
フラット3が日本にとって世界と闘うためにベストな選択なのかというと多くの疑問符が
付かざるを得ない。

そして最後にコミニュケーション。
コミニュケーションの重要性を説き、選手間、チーム内におけるその大切さは彼自身が
一番良く知っているはず。 しかし、若い選手とのコミニュケーションでは成果を出しているが、
協会やクラブなど大人の世界との対話はあまりに幼稚ではないだろうか。 マスコミの
使い方も含め、トルシエが良い関係を築いていけるだけのメンタリティーを持ち合わせているようには思えない。 内紛を抱えたままのホスト国がW杯ベスト16のノルマを果たせるのか
を考えると、答えは「NO」となるのは必然であろう。

以上がトルシエJAPANの評価だが、よく調べもせずにベンゲルの紹介というだけで
試した側の責任は、もっと追求されて然るべきであろうことは言うまでもない。

 

 

 

(FOOTBALL時代の読み物 vol.22  2000/05/08掲載)

 

 

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