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2004/03/01掲載
第10回ちばぎんカップreport
試合後に「今日は出来すぎ。」と語った池谷新監督。それに対し、敵将のオシム監督が「負けるべくして負けたゲーム。」とのコメントを残したように、両チームが実に対照的な姿を見せた試合だった。

新シーズンを占う一戦。これほど明るい結果は、カレッカ、エジウソンという新旧ブラジル代表FWが並んだ1996年以来と言って良いだろう。

キャンプ前には、4バックを頭の中で描いていた池谷監督も、結局は長く安定した結果を残して来た3-5-2を選択。今季、多くの新加入選手を入れた柏であったが、ピッチに散ったイレブンの中に見えた新顔は、山下一人だけ。また、怪我の癒えない平山の代わりに左アウトサイドを任されたのは、完全な右の選手である増田だった。そして、リカルジーニョがトップ下に入り、明神が適任者不在の右へと回った。
<柏:スタメン>
  玉田 山下  
  リカルジーニョ  
 増田   下平   大谷   明神 
近藤 永田  渡辺 
   
立ち上がりから出足で勝る柏。高い位置でボールを奪って押し込む。両アウトサイドが深くえぐる場面こそないものの、トップの山下が広い範囲でポスト役となり、中盤の押し上げを導き出す。

すると、早くも均衡が崩される。8分に奪った左CK。キッカーはリカルジーニョ。ニアサイドに入れたボールを渡辺が粘ってクリアさせずにいると、中へとボールがこぼれて来る。それに反応した永田が、素早く反転して右足を振り抜くと、強烈なシュートがネットに突き刺さる。1-0、柏が幸先良く先制した。

市原は早い時間の失点に焦ったのか、簡単なパスミスが目立つ。ミリノビッチと茶野が欠場し、阿部がスイーパーに入る急造DF陣は、ラインが深くなり過ぎて中盤に広いスペースを作っていた。このため、リカルジーニョがかなり自由に動き回ることが出来、完全に試合をコントロール。長短のパスを織り交ぜた組み立てが可能となる。

次のビッグチャンスは、村井からボールを奪ったリカルジーニョが、右サイドを突破した場面。右からの低いクロスに山下がダイレクトで合わせたが、このシュートは左ポストを叩いてしまい、追加点はならず。

こうなると、敵も徐々に体勢を立て直して来る。30分を過ぎると、市原の両サイドが高い位置で攻撃に絡む回数が増え、柏のDFラインが4バックや5バックになる時間帯が増える。

だが、マルキーニョスとサンドロの2トップは、渡辺、近藤の両ストッパーが密着マーク。嫌な感じで入るクロスボールにも、永田が落ち着いたプレーを見せて危機を回避する。

そして、このまま折り返しとなるかと思われたロスタイム。自陣から増田が縦に走った玉田へパス。玉田は右から中へ切り込むと、ゴールほぼ正面で倒されてFKを得る。
このFKを蹴ったのは、リカルジーニョ。ボールは枠を捕えたが、市原のGK櫛野が指先で触わり、バーに弾かれる。「惜しい!」と思った瞬間、そのリバウンドに反応していたのは、左から飛び込んだ山下。見事なダイビングヘッドで貴重な追加点を奪い、柏での初ゴールをサポーターにプレゼントした。「山下、ありがとう!」とゴール裏から声がかかる中で、ハーフタイムへ。

後半、オシム監督の檄を受けた市原は、立ち上がりから積極的な姿勢を見せて、柏ゴールへ迫る。コンビネーションの不足からか、存在感の薄かったマルキーニョスも惜しいシュートを放ち、坂本が度々ペナルティエリアに侵入すると、増田は完全にDFラインに吸収された状態になる。

そこで53分。池谷監督は、体調が万全とは言えないリカルジーニョと下平を下げて谷澤と矢野貴を送り出し、大幅に配置を替えてみる。これで玉田が2列目に下がり、谷澤が右アウトへ。明神が左のボランチに入った。

但し、この交代は膠着状態を生んでしまう。中盤でタメを作っていたリカルジーニョがいなくなった柏は、攻撃に緩急が付けられなくなり、前を向いてボールをもらいたがる玉田と中盤の底が距離を広げて行く。更に、矢野貴はポストワークが雑な上、縦に動き過ぎて流れを滑らかに出来ずにいた。唯一、谷澤だけが成長した姿を見せて守備面でも強さを発揮したが、目立ったチャンスを作れない。

そんな状況を打開したのが、64分。大谷に代わって遂に登場したドゥドゥの存在感であった。
大きな歓声に迎えられ、ピッチに登場したドゥドゥ。始めこそ、忙しくボールが行き交う展開に戸惑っていたようだが、中央にどっしりと構えることで誰からも顔の見えるポジションに入る。

右サイドにおける守備の対人能力が上がると、谷澤が徐々に高い位置を取るようになり、右サイド偏重ながらも攻撃の力が上がって行く。柔らかなタッチを持つ谷澤には、相手も簡単には飛び込めず。谷澤が前を向いて仕掛ける回数が、急激に増した。

76分、谷澤が玉田とのパス交換から中に切り込むと、右のアウトサイドを使ってDFの裏へボールを落とす。これを山下が右から鋭いシュートを放つと、ボールはGKの股間を抜けてゴールへ。試合を決める3点目かと思われたが、ボールが完全にラインを越える前に市原の主将、阿部がスライディングでかきだしてしまう。

しかし、このボールがゴールライン近くにいた山下のところへ転がると、山下はすかさず中へはたき、待ち構えた谷澤が軽くボレーショット。お返しとばかりに来た絶好のボールを、サポーターの目の前で鮮やかに突き刺し、3-0と突き放すことに成功した。

市原もマルキーニョスと村井を下げて巻、楽山で打開を図ろうとしたが、時既に遅し。
右から巻のシュートがポストを叩く場面こそ生み出したものの、結局、これ以上スコアが動くことはなかった。

80分には、近藤と中澤を入れ替える余裕を見せた柏。通算8度目となるちばぎんカップを獲得し、昨年は一度もなかった3点差での勝利も手にした。

とはいえ、この試合では、喜びべき面と危惧すべき面が、大きく現れたことも確かだし、相手の状態が悪かったこともきちんと差し引いて見るべきであろう。

まず、今季も基本となるフォーメーションは3-5-2で固定されることになりそうだが、両アウトサイドの人材難は予想以上に大きなものとなっている。右を担当した明神は、トルシエ政権時代と変わらぬバランサーのような動きばかりで、高い位置からのクロスボールも皆無に近い状態。村井の動きは封じていたが、攻撃面での物足りなさは強いものが残った。

そして、右サイド以上に深刻な感じがしたのが左サイド。起用された増田は、右足でしかボールを扱えず、適任とは言い難い。相手が詰めている場面でも、右足にボールを置いてしまい、逆襲の火種となっただけでなく、守備面での不安から近藤の真横に長く居座るのでは、アウトサイドとして機能していないことを示すだけであった。

左利きの田ノ上がサブにも入れない状態であるのなら、平山の復帰まで左サイドが大きなウイークポイントとなることは確実だろう。

また、人材難といえば、トップ下のポジションにも同じことが言える。攻撃面でリカルジーニョへの依存度が非常に高く、昨年と同じ臭いを感じた人も少なくないはず。
後半途中からは玉田を試していたが、ゲームをコントロールするプレーが出来る選手ではないため、攻守の切替えが停滞した感じは否めない。

むしろ、球離れの良さやパスセンスという面を考えれば、谷澤を置いた方が良いのではないかと思える。だが、池谷監督の構想では、フィジカル面で十分な力を持たない今の谷澤は、前方に大きなスペースが出来る右サイドで起用した方が好ましいということなのだろう。

こうした負の面を並べる一方で、プラス材料も決して少なくはない。まず、大きな戦力的上積みが確認出来たのが、FWと中盤の底について。ゴールは1つに終わったが、5本のシュートを放ち、うち4本を枠に飛ばす正確性も見せた山下は、大きな戦力となることを確認させてくれたし、玉田もジュシエと組んでいた時より、突破力が効果的に活かされていた。
周囲の選手へ簡単にはたく山下のポストワークがリズムを生み、玉田が衛星的に動くことで前線に深みが付き、DFを釣り出すことが可能となる。

中盤では下平が元気な姿を見せ、大谷は巧みにDFラインのカバーをしながら、攻撃の起点となるパスもいくつか出していた。そして、何よりその潜在能力を垣間見せたのが、期待の新外人ドゥドゥ。立ち姿こそマルシオに似ているが、その技術は段違い。
足首のスナップを利かせてアウトサイドでミドルパスを出していた他、膝下の振りだけで切り返しを入れた時に、相手がたまらずファウルを犯した鋭さは、さすが次代のセレソンを担う選手だと思わせた。

特筆すべきは、ポジショニングと攻撃面での判断の良さで、終盤に左サイドを深く破った攻撃があった際、いち早くゴール前に現れたプレーは、大きなアドバンテージをチームに植え付けることを確信させるもの。

連携という部分ではまだまだであるが、数字を求められるポジションでもないので、少しずつ周囲を把握して行けば、彼の良さが更に出て来るはず。

また、薩川の離脱で不安視されたDF陣であるが、永田が落ち着いたカバーリングを見せて安定感をもたらしていたし、中澤も今季は戦力になりそうな予感を感じさせた。
池谷監督も「コミュニケーションが高い意識でスムーズに出来た。」と語っていた通り、人数をかけるところやスペースの埋め方が忠実なプレーの積み重ねで構成されていた。

昨年よりもフラットに近い3バックは、ほぼ固定されて練習を積んで来たこともあり、脆弱な姿をさらすことはなさそうである。

それでも、慢心は禁物。海外での大会にも参加していた横浜や磐田、東京Vなどは、すでに骨格を固めて数試合をこなしている。ようやく形が見え始めた柏が上位グループに食いつくためには、早い段階で自分たちのスタイルを押し出して行かねばならない。

開幕まで残り2週間。修正すべき点には、神経質な程に目を光らせて今年の柏がどのようなチームとなるのかを追求して欲しい。
記録
第10回 ちばぎんカップ
4月5日(日) 日立柏サッカー場
天候:曇 観衆:8,533人
柏 3(2-0/1-0)0 市原
得点:  柏 − 永田(8分)、山下(44分)、谷澤(76分)
大分戦の評価(10点満点)
5.5 不用意なフィードに無用なファンブルもあった。更なる集中を。
渡辺 6.0 ゴール前での粘りが先制点に。ポスト役を封じるのはお手のもの。
永 田 7.0 最後尾で落ち着いた処理を見せた。攻撃参加は意識して封印?
近 藤 6.0 堅実なプレーで完封檄に貢献したが、足が止まる場面もあった。
(中澤) - 勝負の年となる。プレー機会は少なかったが、状態は良さそう。
明 神 5.5 深くえぐることが出来ないのでは・・。ボランチにいた方が活きる。
大 谷 6.0 的確なカバーでDFラインをケア。当たりの強さも増している。
(ドゥドゥ) - 高い技術は垣間見せた。今後に期待を抱かせる存在感を示す。
下 平 6.0 疲れも見えたが、無難な出来。散らしのパスも的確だった。
(矢野貴) 5.0 身体は太くなったが、安定性に欠ける。レギュラーは厳しい。
増 田 5.5 左での起用は気の毒。中に入っての仕事は良いだけに勿体無い。
リカル
ジーニョ
6.5 今季もチームのキーマン。果敢な飛び出しは敵の脅威。
(谷澤) 6.5 しなやかな技術とセンスは良いスパイスに。先発では使えないか。
玉 田 6.0 新しいパートナーとは相性も悪くない。仕掛けの場所も改善中。
山 下 7.0 素晴らしいデビュー戦。懸案の得点力不足を解消してくれるか?
池 谷 6.0 上々の出足だが、相手の拙攻にも助けられた。交代策は微妙。